条文は韓国政府の国家法令情報センターに拠る。

北韓人権法
[施行 2016.9.4][法律 第14070号、2016.3.3 制定]
第1条(目的)
この法は北韓住民の人権保護および増進のために、国連世界人権宣言など国際人権規約に規定された自由権および生存権を追求することにより、北韓住民の人権保護および増進に寄与することを目的とする。
第2条(基本原則および国家の責務)
①国家は北韓住民が人間としての尊厳と価値を持ち幸福を追求する権利があることを確認し北韓住民の人権保護および増進(以下”北韓人権増進”とする)のために努力しなければならない。
②国家は北韓人権増進努力と共に南北関係の発展と韓半島での平和定着のためにも努力しなければならない。
③国家は北韓人権増進のために必要な財源を持続的で安定的に工面しなければならない。
第3条(定義)
この法で“北韓住民”とは軍事境界線の以北地域に居住しこの地域に直系家族・配偶者・職場など生活の根拠を置く人を言う。
第4条(他の法律との関係)
北韓人権増進のために努力するにあたり「南北交流協力に関する法律」、「南北協力基金法」、「南北関係発展に関する法律」に特別な規定がある場合を除いてはこの法で定めることに従う。
第5条(北韓人権増進諮問委員会)
①北韓人権増進関連政策に関する諮問のために統一部に北韓人権増進諮問委員会(以下”委員会“とする)を置く。
②委員会は委員長1名を含む10名以内の国会が推薦する人士で構成し委員長は委員の中から互選する。国会が委員を推薦するにあたり大統領が所属したり所属していた政党の交渉団体と、それ以外の交渉団体が2分の1ずつ同数で推薦し統一部長官が委嘱する。
③委員会の構成および運営などに必要な事項は大統領令で定める。
第6条(北韓人権増進基本計画および執行計画)
①統一部長官は関係中央行政機関の長と協議し3年ごとに次の各号の事項を含む北韓人権増進基本計画(以下”基本計画”とする)を委員会の諮問を経て樹立しなければならない。
1.北韓住民の人権実態調査。
2.南北人権対話と人道的支援など北韓住民の人権保護および増進のための方案。
3.その他に北韓住民人権保護および増進に関する大統領令で定める事項。
②統一部長官は基本計画にしたがい毎年北韓人権増進に関する執行計画(以下”執行計画”とする)を委員会の諮問を経て樹立しなければならない。
③統一部長官は基本計画および執行計画が樹立される時にはこれを遅滞なく国会に報告しなければならない。
第7条(南北人権対話の推進)
①政府は北韓人権増進に関する重要事項に関し南北人権対話を推進しなければならない。
②南北人権対話の代表任命に必要な事項は「南北関係発展に関する法律」第15条を準用する。
③その他の南北人権対話の推進のために必要な事項は大統領令により定める。
第8条(人道的支援)
①国家は北韓人権増進のために北韓住民に対する人道的支援を北韓当局または北韓の機関に提供する場合には次の各号の事項が遵守されるよう努力しなければならない。
1.国際的に認定される引渡基準により透明に推進されなければならない。
2.妊産婦および嬰乳児など脆弱階層に対する支援が優先されなければならない。
②国家は民間団体などが施行する人道的支援に対しても第1項各号の事項が遵守されるよう努力しなければならない。
第9条(北韓人権増進のための国際的協力)
①国家は北韓人権増進のための人的交流・情報交換などと関連し国際機構・国際団体および外国政府などと協力し、北韓人権増進に対する国際社会の関心を堤高するために努力しなければならない。
②第1項による北韓人権増進のための国際的協力のために外交部に北韓人権対外直命大使(以下”北韓人権国際協力大使”とする)を置くことができる。
③北韓人権国際協力大使の任務・死角などに必要な事項は大統領令で定める。
第10条(北韓人権財団の設立)
①政府は北韓人権の実態を調査し南北人権対話や人道的支援など北韓人権増進と関連する研究と政策開発などを遂行するために北韓人権財団(以下”財団”とする)を設立する。
②財団は法人としその主となる事務所の所在地に設立登記をすることで成立する。
③財団は次の各号の事業を遂行し、各号の事業を遂行する別途の担当機構を置くことができる。
1.南北人権対話など北韓人権増進のための次の各目の事業。
カ.北韓人権実態に関する調査・研究。
ナ.南北人権対話などのための政策代案の開発および対政府建議。
タ.その他に委員会が審議し統一部長官が指定する事業。
ラ.カ目からタ目までの事業の遂行に必要な市民社会団体に対する支援
④その他の財団の設立に必要な事項は大統領令で定める。
第11条(財団の運営)
①財団は次の各号の財源で運営する。
1.政府の出捐金。
2.その他の収入金。
②財団は「寄付金品の募集および使用に関する法律」第5条第2項各号の部分本文にもかかわらず自発的に寄託される金品を使用目的に符合する範囲で統一部長官の承認を受け受け付けられる。
③統一部長官は財団を指導・監督する。
④統一部長官は財団の目的達成のために必要な時には関係機関の長に所属公務員を財団に派遣するよう要請できる。
⑤財団に関しこの法で規定した事を除いては「民法」中の財団法人に関する規定を準用する。
⑥その他の財団の運営と指導・監督、寄託金品の受け付け手続きなどの必要な事項は大統領令で定める。
第12条(財団役員の構成)
①財団には理事長1名を含む12名以内の理事を置き、理事は統一部長官が推薦した人士2名と国会が推薦した人士で構成されるが、国会が理事を推薦するにあたっては大統領が所属したり所属していた政党の交渉団体とその他の交渉団体が2分の1ずつ同数で推薦し統一部長官が任命する。
②理事長と定款により定める常勤理事を除く役員は非常勤とする。
③理事長は理事の中で互選し理事長および理事の任期は3年とするも、一度だけ重任できる。ただ、当然職理事の任期はその在任期間とする。
④その他に財団の役員の構成などに必要な事項は大統領令で定める。
第13条(北韓人権記録センター)
①北韓住民の人権状況と人権増進のために情報を収集・記録するために統一部に北韓人権記録センター(以下”記録センター”とする)を置く。
②記録センターは次の各号の事項を遂行し、各種資料および情報の収集・研究・保存・発刊などを担当する。
1.北韓住民の人権実態調査・研究に関する事項。
2.国軍捕虜、拉北者、離散家族と関連する事項。
3.その他に委員会が審議し統一部長官が必要だと認める事項。
③第2項各号による事業は外部機関に委託することができる。この場合、予算の範囲で必要な経費を支援できる。
④記録センターにはセンター長1名を置き、センター長は高位公務員団に属する公務員または北韓人権と関連し学識と経験が豊富な民間専門家の中から統一部長官が任命または委嘱する。
⑤記憶センターで収集・記録した資料は3か月ごとに法務部に移管し、北韓人権記録関連資料を保存・管理するために法務部に担当機構を置く。
⑥その他に記録センターの構成・運営などに必要な事項は大統領令で定める。
第14条(関連機関などの協力)
①統一部長官は北韓人権増進に関する業務と関連し別の行政機関や公共団体、関連人事に対し資料提出、意見陳述、その他に政策遂行に必要な事項に対する協助を要請できる。
②第1項の要請を受けた行政機関および公共団体の長、関連人士は特別な事由が無ければこれに従わなければならない。
③関係中央行政機関または地方自治団体の長はこの法による業務と関連する内容を含む法令および条例などを制定したりする場合、あらかじめ統一部長官に通知しなければならない。
第15条(国会報告)
①統一部長官は基本計画と執行計画の報告以外にも毎年、北韓人権増進に関し次の各号の事項を定期会前まで国会に報告しなければならない。
1.北韓住民の人権実態。
2.北韓人権増進の推進結果および改善状況。
3.国軍捕虜および拉北者の送還、離散家族の再会などに関する計画の樹立・推進状況。
4.第1号から第3号まで規定された業務と関連し国家・地方自治体および公共機関がそれぞれ遂行する事業内訳と施行結果および評価。
5.その他に北韓人権増進に関し必要だと統一部長官が認定する事項
②国会は必要な場合、第1項による政府の報告に対し是正または改善を勧告できる。
第16条(罰則適用から公務員議題)
財団の役員・職員はこの法による職務遂行と関連し「刑法」第127条と第129条から132条までの規定を適用する時には公務員と見なす。
第17条(罰則)
嘘やその他の不正な方法でこの法に拠る支援金をもらった者は3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金に処す。
附則<法律 第14070号、2016.3.3>
第1条(施行日)
この法は公布後6か月が経過した日から施行される。
第2条(北韓人権財団設立準備)
①統一部長官はこの法の公布日から30日以内に7人以内の設立委員を委嘱し財団の設立に関する事務を処理するようにしなければならない。
②設立委員は財団の定款を作成し、統一部長官の認可を得なければならず、認可を受けた場合には遅滞なく連名で財団の設立登記をしなければならない。
③設立委員は財団の設立登記後に遅滞なく財団の理事長に事務を引き継がなければならず、事務引き継ぎが終わった時には解嘱されたものと見る。
④財団の設立に必要な費用は国家が負担する。