「このままでは何もできないまま終わる」…韓国の有力市民団体が連名で南北関係改善を求める声明を発表
「このままでは何もできないまま終わる」…韓国の有力市民団体が連名で南北関係改善を求める声明を発表
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2020.12.18 17:43
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2019年下半期から下降を続け、今や「ゼロ」となってしまった南北関係。過去、南北交流に力を尽くしてきた市民団体が南北双方に対話の再開と南北合意の履行を求めた。
今年6月16日、北朝鮮により「南北共同連絡事務所」が爆破された際、被害を受けた「開城工業団地支援センター」。20年6月17日の朝鮮中央テレビをキャプチャ。
今年6月16日、北朝鮮により「南北共同連絡事務所」が爆破された際、被害を受けた「開城工業団地支援センター」。20年6月17日の朝鮮中央テレビをキャプチャ。

●「暗黒の10年」よりも悪い

今月17日、「民族和解協力汎国民協議会(民和協)」や「対北協力民間団体協議会(北民協)」といった7つの市民団体が連名で、『南北関係改善のための市民社会団体共同声明書』を発表した。

「民和協」は20年以上の歴史を持ち幅広い団体や個人が参加する韓国の代表的な統一運動団体だ。一方、「北民協」は50以上の北朝鮮人道支援・開発援助機関の集合体で、長い期間にわたって蓄積されたノウハウと人脈を持つ。いずれも北朝鮮と交流を続けてきた代表的な団体だ。

「世界を覆った新型コロナの災害と南北間の政治的な硬直により、韓半島(朝鮮半島)の平和に向かう南北協力の車輪が止まった2020年が、何の希望もなく暮れていく」と始まる声明書は、現状がいかに厳しいかを切々と綴っている。

特に「2019年2月、米朝ハノイ会談の決裂以降、南北関係は冷静に評価して3年前の状況に戻ってしまった。南北当局間の対話だけでなく、過去の政府10年の暗黒期(筆者注:南北関係が悪化した李明博、朴槿惠政権の期間を指す)にもなんとか続けてきた民間の次元の対話と協力事業も中断した」という現実が胸を打つ。

昨今の南北関係について、筆者も韓国統一部のある高官が「2019年以降下がり続け、もう下がらないと思ってもさらに下がっている」と嘆くの聞いたことがあるが、比較的交流がしやすい支援や統一運動といった分野でも文字通り「ゼロ」になっているようだ。

この現状を前に、声明書では「これ以上送らせることはできない。南北の問題は南北共同宣言で合意した民族自主と民族自決の精神に基づき推進していかなければならない。韓国政府はより自主的で主導的な役割を遂行すべき」と韓国政府が積極的に動くこと主張している。

特に、新型コロナウイルス感染症の拡大について「感染病で苦痛を受ける国民の安全と健康を保障するために必ず推進されるべき南北の共同防疫と対応措置のための協力が行われるよう、より粘り強く努力すべき」と訴えている。

さらに「今のような状況が続く」場合には「文在寅政府が南北交流の歴史が新たに開かれたのにもかかわらず、意味のあることをできなかったという評価を受けないかと憂慮する」と付け加え、文政権には時間が残されていないことを指摘した。

南北関係は現在、韓国が送るさまざまな融和的ジェスチャーにも、北朝鮮がこれに一切応えないというのが実情だ。韓国は米韓同盟や国際社会との協調を重視するため、金剛山観光再開や開城工業団地再稼働といった踏み込んだ決断もできずにいる。これを充分に理解した上で、市民団体は韓国政府に奮起を促しているものと見られる。

声明書には、来年1月に米国で発足するバイデン新政権と北朝鮮当局に対し、「2018年シンガポールで行われた米朝首脳間の合意に基づき、『韓半島非核化と平和体制の構築』、『新たな米朝関係の改善』などを履行することを求める内容も含まれている。

以下は声明文本文。翻訳は筆者。

私たちの立場

1. 南北当局は中断された対話を再開し、過去に南北首脳間で合意した事項について履行していくよう促します。

コロナパンデミックの状況を共に克服するため、南北当局は共同防疫、保健協力など韓半島の構成員の安全と健康保障のための活動に、積極的に乗り出さなければなりません。

離散家族の再会など緊急性を要する人道的協力を優先的に推進しなければなりません。

韓半島内の軍事的緊張を未然に防止するための措置を取らなければなりません。南北当局は軍事的な緊張関係を高める軍備増強と軍事訓練、そして武力挑発を中断しなければなりません。

南北間の協力を妨害してきた「5·24措置」を廃棄し、南北間の交流協力を活性化するための法と制度を整備しなければなりません。

南北間の交流協力事業を持続化させ拡張するためには、「9月平壌共同宣言」で約束した京義(キョンウィ)線・東海(トンヘ)線鉄道・道路の現代化事業などが直ちに推進されなければなりません。

特に、政府が約束した開城工業団地の再稼働や金剛山観光の再開のため、実質的かつ創意的なな解決策を進めるべきです。

2. 新たに発足するバイデン米政府と北朝鮮当局が、2018年シンガポールで行われた米朝首脳間の合意に基づき、「韓半島非核化と平和体制の構築」、「新たな米朝関係の改善」などを履行することを求めます。

韓半島内の非核化と平和体制の構築は韓半島の構成員の念願であり、国際社会の意志です。このため米朝当局は責任を持って対話を再開していかなければなりません。

3. 国際社会は、韓半島における緊張緩和と平和のための南北協力を支持し、実質的な協力が可能になるよう、対北朝鮮制裁を緩和しなければなりません。さらに、韓国政府が責任を持って遂行する南北協力分野に対しては、制裁免除権を韓国政府に委任することを求めます。

2020.12.17

民族和解協力汎国民協議会
対北協力民間団体協議会
市民平和フォーラム
開城工団企業非常対策委員会
金剛山企業協会
南北経済協力協会
韓国宗教人平和会議(KCRP)
 


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