
●文在寅大統領、2021年新年辞 「国民が作った希望:回復、包容、跳躍」
尊敬する国民の皆さま、辛丑年の新年を迎えました。
希望を祈りながらも心が重いですね。新年が新年らしくないという言葉を実感しています。
コロナとの長い戦争が終わっていません。
生命と安全が依然として脅かされ、未曾有の民生経済の困難が続いています。日常の喪失による痛みも続いています。
苦難の時期を乗り越えておられる国民の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
しかし、新年は明らかに違う年になります。私たちは共にコロナを勝ち抜くでしょう。2021年は韓国の国民にとって「回復の年」、「包容の年」、「跳躍の年」となるでしょう。
国民の皆様、
2020年、新種の感染病が人類の命を脅かし、日常は完全に変わりました。
私たちも例外ではありませんでした。
世界経済も大恐慌以来、最悪の低迷に見舞われました。
韓国の経済もマイナス成長を免れませんでした。
皆が困難で大変でした。
国民は一年中、不便を甘受しなければなりませんでした。
しかし、私たちはくじけませんでした。危機の中で大韓民国はむしろ輝きました。医療陣は献身的に患者の世話をし、国民は自ら防疫の主体になりました。
韓国の国民は隣人の安全がすなわち私の安全というごく平凡な真実を、驚くべき実践で全世界に見せました。
国民が自発的に構想した創意的な防疫措置は、迅速に現場に適用されました。
韓国の診断キットや「ドライブスルー」検査方法、マスクなどの防疫物品は世界各国に普及し、人類をコロナから守るのに大きく貢献しました。
「K−防疫」は、国民一人ひとりの献身と犠牲の上に成り立ったものです。
世界で初めて全国単位の選挙と入試を行い、封鎖することなく拡散を最大限に抑制し、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも最高の防疫模範国家となったのは、韓国国民が作り出した誰もけなすことができない大切な成果です。
国民の相生(共生)精神は経済危機を克服することにも最も大きな力となりました。
「善良な賃貸料運動」を皮切りに、「善良な先決済運動」と「農産物セット運動」が続き、困っている隣人と「共に生きる道」を見つけました。
労働者たちは経済危機の克服の先頭に立ち、企業は最大限雇用を維持してくれました。
韓国経済は昨年、OECD加盟国の中で最高の成長率であり、GDP規模で世界10位圏内に入る見込みであり、1人当たりの国民所得も史上初めてG7国家を超えると予測されています。株価指数も2,000台突破から14年目にして株価3,000時代を切り開き、G20諸国の中で最も高い株価上昇率を記録し、危機の中でも韓国経済の未来展望が明るいことを示しています。
大韓民国は決して止まりませんでした。国民の皆さまが困難の中で最善を尽くし、危機に強い大韓民国の底力を見せてくれました。
やっと暗いトンネルの終わりが見えます。不確実性の多くが晴れ、これからは予測し、展望しながら計画を立てることができるようになりました。
今年、私たちは完全に日常を取り戻し、迅速かつ強い経済回復で新しい時代の先導国家として跳躍するでしょう。
しかし国家経済が好転しても、雇用を回復し、小商工人·自営業者が受けた打撃を回復するにはさらに多くの時間がかかります。
コロナでさらに深まった格差を縮める包容的な回復を遂げることが何よりも重要です。
国民の皆さま、
マスクから解放される普通の日常に素早く戻ることが急務です。
少しずつ良くなっている防疫の 最後の峠をうまく乗り切ることが先です。
政府は国民と共に第3次流行を早期に終わらせるよう最善を尽くします。来月になれば、ワクチン接種を始められます。
優先順位に従って順番に全国民が無料で接種を受けられるようにします。韓国の企業が開発した治療剤の審査も進行中です。安全性の検査と許可、使用と効果に至るまでの全過程を透明に公開します。
独自のワクチン開も引き続き督励していきます。
ワクチン自主権を確保し、韓国の国民の安全と国際保健協力の強化に寄与するようにします。
経済においても早く強い回復を成し遂げます。
すでに韓国経済は、昨年の第3四半期からプラス成長へと転換しました。昨年12月の輸出は2年ぶりに500億ドルを超え、12月基準としては史上最高値を記録しました。この勢いに続いて韓国の経済は今年上半期に新型コロナ以前の水準を回復することになるでしょう。
民生経済では新型コロナ第3次流行の被害業種と階層を支援するため、本日から280万人の小商工人、自営業者と特殊雇用職、フリーランス、介護従事者をはじめとする87万人の雇用弱者層に第3次災害支援金を支給します。
十分でないことを知っていますが、民生経済回復のための呼び水になることを期待します。
政府はこれにとどまらず、民生経済の回復に向けて、これからも政策の力量を総動員していきます。
上半期中に韓国経済がコロナ以前の水準に回復できるよう、拡張的予算を速やかに執行し、110兆ウォン(約10.4兆円)規模の公共・民間投資プロジェクトを迅速に推進します。
民生経済の核心は雇用です。
昨年より5兆ウォン増えた30兆5000億ウォンの雇用予算を 第1四半期に集中投入します。
特に、若者・高齢者・障害者をはじめとする脆弱階層のために、直接的な雇用104万件を作る予定です。
「共に」危機を克服するための雇用セーフティーネットと社会セーフティーネットも一層強化されます。
青年層と低所得求職者が就職支援サービスと共に生計費の支援を受けられる国民就業支援制度が今月から施行されます。
昨年の芸術家に続き、7月から特殊雇用職まで雇用保険の適用が拡大する予定です。
これまで扶養義務者がいるという理由で生計給与(生活保護の一部)を受けられなかった高齢者と片親家庭、低所得世帯すべてが今月から生計給与を受けることができるようになり、来年からはすべての世帯の扶養義務者基準を廃止します。
今後、全国民雇用保険制度、傷病手当など雇用セーフティーネットと社会セーフティーネットの拡充努力を続けていきます。
危機であるほど互いの手を取って共に進まなければなりません。
共に危機から脱してこそ、日常に戻ることもその分容易になります。
昨年、積極的な雇用創出と低所得層への支援努力により、他の国々に比べて雇用の衝撃を緩和することができました。
低所得層に対する政府支援を大幅に増やし、財政を通じた分配改善の効果も大幅に増えました。
しかし、まだ足りません。国民生活の回復とセーフティネット拡充のためにより一層努力します。
不便さを我慢して隣人をまず考えてくださった国民の努力が無駄にならないよう、
「格差を縮める危機の克服」でお応えします。
住居問題の困難で落胆の大きい国民の皆さまには、大変申し訳ない気持ちです。住居安定のために必要な対策作りを躊躇わず行います。特に供給拡大に力点を置き、
早期に効果が出る多様な住宅供給方法を迅速に模索します。
国民の皆さま、
コロナによって世界経済が急速に変化しています。
非対面経済とデジタル革新が加速化し、第4次産業革命が早まっています。
コロナ以降変化する世界市場を先取りするための各国の競争もより激しくなるでしょう。
未来は準備する者の物です。韓国経済も「先導型経済への大転換」に乗り出しました。
自動車、造船のような韓国の主力産業が競争力を取り戻しています。
自動車生産量は昨年に世界5指に入り、造船受注量は世界1位の座を取り戻しました。
政府が力点を置いてきたシステム半導体、未来型自動車、バイオヘルスの3大新産業すべて二桁の輸出増加率を見せ、新しい主力産業として早く定着しています。
未来に対する投資も持続的に増えています。
研究開発投資100兆ウォンの時代が幕を開けました。
世界で5番目の規模です。
コロナの状況の中でも第2のベンチャーブームがさらに広がり、昨年のベンチャーファンドの結成額は過去最大の5兆ウォンに達し、ベンチャー企業の増加、雇用増加、輸出規模のいずれも史上最大を記録しました。
韓国経済の革新速度は「相生(共生)」の力を借りてより加速していきます。
私たちは、大・中小企業の協力により日本の輸出規制の波に打ち勝ち、光州において始まった「共生型地域雇用」は全国に広がり、電気自動車、先端素材など新しい成長動力を育てています。
今年から本格的に推進される「韓国版ニューディール」の核心も「人」と「相生(共生)」です。
「韓国版ニューディール」が本格的に推進されれば、大韓民国の全国各地で変化が起きるでしょう。 新しい人材を育成し、新しい成長動力と良質の雇用が創出されるでしょう。「デジタルニューディール」と「グリーンニューディール」は、国民の生活の質を変えるでしょう。何よりも国民が「韓国版ニューディール」を体感し、先導国家へ進む道に同行することが最も重要です。
「韓国版ニューディール」の重点を「地域均衡ニューディール」に置くことにします。
地域が主体となり、自治体と住民、地域企業と人材が知恵を出し合い、現実的かつ創意的な発展戦略を作ることができるようにします。
地域経済革新のための努力も強化していきます。国の地方協力特別交付税等を活用した財政支援とともに、新たに規制自由特区を指定し、革新の速度を高めます。
また、国家均衡発展のための大規模·超広域プロジェクトを迅速に推進し、生活インフラへの投資を増やし、地域住民の生活の質をより高めます。
「韓国版ニューディール」が「地域均衡ニューディール」を通じて私たちの暮らしの中に染み込み、既存の国家均衡発展計画と相乗効果を出せば、私たちが夢見た「革新的包容国家」に大きく近づけるでしょう。
政府は民間が活発に参加できるよう、ニューディールファンドの造成と制度的な基盤の造成に努めます。
デジタル経済への転換、気候危機への対応、地域均衡発展などニューディール10大領域の核心立法を迅速に推進し、企業とのコミュニケーションと協力を強化していきます。
国民の皆さまも積極的にご参加ください。
社会が公正だという信頼がある時、私たちは「共に生きる道」を選択でき、失敗しても立ち直れるという勇気で、革新の力が強くなることでしょう。
私たちは公正の力を信じ、その価値を正しく確立しています。
権力機関の改革は、牽制と均衡を保つことです。
法秩序が誰にでも平等で公正に適用されるようにすることです。
私たちは昨年、長年の宿題だった法制度的な改革をついに成し遂げました。公正経済三法と労働関連三法とは、経済民主主義を成し遂げ、成長の持続可能性を高めます。
いずれも長い間形成された制度と慣行を変えることであるだけに、現場に定着するまで、多くの困難と葛藤要素があることは事実です。
様々な利害関係者と緊密にコミュニケーションして協力し、改革された制度を安着させていきます。
コロナ時代の教育格差や各種ケアにおける格差の緩和、必須労働者の保護、労働災害の予防、性犯罪の根絶、虐待児童の保護など韓国社会の各分野で新たに提起される公正への要求にも絶えず耳を傾け、対策を補完してまいります。
国民の皆さま、
気候変動のような地球的問題を解決するためにも、相生(共生)の精神が発揮されなければなりません。
韓国の国民は、自分が少し不便でも自然と共に生きるという強い意志を持っています。
今年は気候変動枠組条約の履行元年です。
政府はこれまで韓国経済の構造を低炭素化することを推進してきました。
その努力を拡大し、年内にエネルギーや産業をはじめとする社会の全分野で「2050炭素中立」推進計画を具体化します。
政府は水素経済と低炭素産業生態系の育成にさらに拍車をかけ、世界市場を先取りしていきます。
5月にソウルで開かれる「第2回P4G首脳会議」が「炭素中立」に向けた国際社会の意志が結集される場となるよう、国民と共に準備します。
ソフトパワーでも先導国家として跳躍します。
韓国の文化芸術は、民主主義が育てました。
韓国の文化芸術の創意力、自由な想像力は民主主義とともにより多様化し、より大きな競争力を持つようになりました。
BTS、BLACKPINK、映画<寄生虫(パラサイト)>のようなK−コンテンツが世界の人々を魅了し、幸せを提供しています。
政府は 文化芸術家たちが創意力と「才能」を思い切り発揮できるよう芸術創作活動を支援し、 韓流コンテンツのデジタル化を促進するなど、文化強国の地位をさらに確かなものにしていきます。
素晴らしい技量を持った韓国のスポーツ選手と指導者たちも、それだけで韓国を知らせるK−コンテンツです。
昨年はソン・フンミン、リュ・ヒョンジン、キム・グァンヒョン、コ・ジニョン選手をはじめとする多くのスポーツ選手が韓国の国民と世界の人々に希望と勇気を伝えました。
今やメダルが重要な時代は過ぎました。楽しむ時代です。政府は専門体育関係者と生活体育関係者が、スポーツをする際に人権を保障され、思う存分スポーツを楽しめるように干渉なく支援します。
新型コロナは、互いの距離を置くことを強要しましたが、逆説的に、世界中の人々の日常が一つにつながっていることを見せてくれました。
韓国は堂々とした中堅国家として、先進国と開発途上国が互いをより理解して相生(共存)できるよう、「架橋国家」の役割を果たしていきます。
RCEP、韓インドネシアCEPAに続き、フィリピン、カンボジア、ウズベキスタンとのFTAに拍車をかけ、新南方、新北方諸国との交流と協力を広げます。
中国、ロシアと進めているサービス投資FTA、ブラジル、アルゼンチンをはじめとするメルコスール(南米南部共同市場)、 メキシコなど太平洋同盟との交渉を加速し、CPTPP加入も積極的に検討します。
韓日関係の未来志向の発展のためにも、努力し続けます。
私たちの検証された保健医療の力量と高い市民意識、優れた文化能力、デジタル技術の発展、炭素中立社会の意志、高まった国際社会での役割と位相を通じ、大韓民国はソフトパワーでも責任ある先導国家の道を堂々と歩んでいきます。
国民の皆さま、
今年は南北が国連に同時加入して30年になる年です。
韓半島の平和と繁栄が国際社会にも役立つということを、南北は手を取り合って、一緒に証明しなければなりません。
戦争と核兵器のない平和の韓半島こそ、民族と後裔に残さなければならない私たちの義務です。
政府は米国のバイデン政権の発足に歩調を合わせ、韓米同盟を強化する一方、止まっている米朝対話と南北対話において大転換を成し遂げられよう、最後の努力を尽くします。
南北協力だけでも成し遂げられることが多いです。
「平和」はすなわち「相生(共生)」です。
我々は家畜伝染病や新種感染病、自然災害を経て、互いに緊密につながっていることを自覚しています。
私たちは多くの問題で同じ船に乗っています。南北の国民の生存と安全のために、協力できる方案を見つける必要があります。
新型コロナに対応する過程で、「相生と平和」の扉が開くことを願っています。
「北東アジア防疫・保健協力体」、「韓−ASEAN包括的保健医療協力」をはじめとする域内対話に、南北が共にすることを願っています。
新型コロナ協力は家畜伝染病や自然災害など、南北の国民の安全と生存に直結する問題に対する協力へと拡張することができます。
協力がますます広がるとき、私たちは統一の道を一歩ずつ進むことができます。
韓半島平和プロセスの核心的な動力は、対話と相生協力です。
いつでも、どこでも会って、非対面の方式でも対話できるという私たちの意志は変わりません。
これまで南北がともに合意したすべての合意、特に「戦争不容認」、「相互間の安全保障」、「共同繁栄」の3大原則を、共同で履行していく中で国際社会の支持を引き出すなら、韓半島を越えて東アジア地域を中心にした「平和・安保・生命共同体」の扉が大きく開かれるでしょう。
尊敬する国民の皆さま、
マスクは今までとても簡単に購入でき、 人類の暮らしでそれほど注目されるものではありませんでした。
しかし、コロナ襲いかかってくるやマスクは自分を守るための保護装備でありながら、思いやりの気持ちを表す美しい物となりました。
「必須労働者」という言葉も新たに生まれました。
新型コロナを経験しながら、保健、介護(ケア)、運送、環境美化、コールセンター従事者のように、私たちの日常を維持するためになくてはならない、不可欠な役割を果たす方々の苦労を新たに悟りました。
私たちの周囲で当たり前に見かけた物一つが、ある瞬間、最も重要な物になるということを悟りましたす、同様に私たちは必ず必要な役割を果たしながらもまともな処遇を受けられない方達がまだ多いということも、改めて感じるようになりました。
昨年、私たちは、この社会において本当に重要なものが何なのか、振り返ることができました。
「皆の安全が私の安全」という事実を振り返り、共にに行動することができました。
2021年、私たちの目標は明らかです。「回復」と「跳躍」です。そこに「包容」を加えたいです。日常を取り戻し、経済を回復し、格差を減らす一年になるでしょう。
コリアディスカウント時代が終わり、コリアプレミアム時代へと進む、先導国家として飛躍する道を目指していきます。
昨年は危機に強い国、大韓民国を再発見した年でした。
2021年の今年は、回復と包容と跳躍の偉大な年にしていきましょう。
ありがとうございます。