韓国国会で初の「産業災害聴聞会」…大企業のCEOに議員が“安全”を要求
韓国国会で初の「産業災害聴聞会」…大企業のCEOに議員が“安全”を要求
  • 徐台教(ソ・テギョ) 記者
  • 承認 2021.02.23 23:30
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産業災害(労働災害)で毎年多数の死者が出ている韓国で、各分野の代表的な企業のCEOを国会に呼び、安全な労働環境を約束させる異例の聴聞会が開かれた。
22日、国会で開催された聴聞会で発言するPOSCOの崔正友(チェ・ジョンウ、右端)会長。聯合ニュース提供。
22日、国会で開催された聴聞会で発言するPOSCOの崔正友(チェ・ジョンウ、右端)会長。聯合ニュース提供。

●毎年2000人近い死者

韓国の国会環境労働委員会は22日、建設・宅配・製造業の分野で9つの大企業の代表を証人として呼び、聴聞会を開いた。

この聴聞会は第一野党・国民の力の主導によって開催された点が特徴だ。同党は今年1月8日に成立した『重大災害処罰などに関する法(以下、重大災害法)』をめぐる過程では消極的な態度を見せていたが、今回は一転して状況をリードした。

この日、参加したのは建設分野からは「GS建設」、「POSCO建設」、「現代建設」、近年韓国で急速な成長を見せている宅配分野からは「coupang(クーパン)」、「ロッテグローバルビジネス」、「CJ大韓通運」が、そして製造業では「LGディスプレイ」、「現代重工業」、「POSCO」の計9社だ。

いずれも韓国屈指の大企業であると同時に、最近2年間、産業災害が頻繁に起きた企業でもある。特に昨年夏以降、「重大災害企業処罰法」制定の動きが本格化する中でも、産業災害の抑制に消極的な姿を見せた企業を優先的に選択した。

韓国の労働者は、2017年1952人・18年2142人・19年2020人(事故855人、疾病1165人)と、毎日平均6人が亡くなる異常な環境に置かれ続けている。

OECD(経済協力開発機構)諸国のうち、韓国の産業災害死亡率はトルコ、メキシコと並び世界最悪の水準だ。リベラルを謳う文在寅政権下でもこの大問題は放置され続けてきたが、ようやく新法ができた段階だ。

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通訳を交え質問に答える、『Coupang Fulfillment Services』のジョセフ・ネイサン代表(右)。聯合ニュース提供。
通訳を交え質問に答える、『Coupang Fulfillment Services』のジョセフ・ネイサン代表(右)。聯合ニュース提供。

●頭を下げるCEOたち

聴聞会で議員たちの矛先は、韓国鉄鋼最王手『POSCO』の崔正友(チェ・ジョンウ)代表に向けられた。

腰痛を理由に出席を拒んだ崔代表に対し、野党・国民の力の金雄(キム・ウン)議員は「腰が痛いだけもそんなに大変なのに、ローラーで巻き込まれて死んだらどんなに大変なことか」と崔氏を攻め立て、同党の林利子(イム・イジャ)議員も「死亡した労働者に対し丁重に謝罪から行うべきではないか」と強く迫った。

これに崔代表は「私の考えが足りなかった。申し訳ない。安全な現場を作っていく」と述べる共に、「遺族の皆さんに心から謝罪する」と頭を下げた。韓国紙によると、POSCOではチェ会長が就任した18年7月以降、挟まる事故や墜落または爆発事故で15人もの労働者が亡くなっている。

一方、『現代重工業』の韓永錫(ハン・ヨンソク)代表は聴聞会の席で「産業災害事故が起きるパターンを分析してみると、実質的に安全ではない現場の状態と、作業者の行動によってたくさん起きている」と述べ、「作業者たちに責任を転嫁している」と議員達から非難を浴びた。

その後、韓代表は「安全でない作業が存在しないように作業標準を変え、形が決まっていない作業を定型化していく」と今後の計画を説明した。

さらに、この日出席した中で唯一の外国人CEOであった『Coupang Fulfillment Services』のジョセフ・ネイサン代表も、通訳を交えて議員の質問に答えた。

昨年10月に同社の物流センターでの深夜勤務後に亡くなった故チャン・ドクチュン氏(27)について指摘を受けるや、「私は故人と同い年の娘がいる。そのため故人の両親がどんなに深い傷を負ったのか想像すらつかない」と述べ、「再発防止のために最善の努力を尽くす」と明らかにした。

 


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