
●「北朝鮮人権法案の実施」も
10日(現地時間)、スイス・ジュネーブで行われた国連人権理事会で、トマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告官は韓国社会に対し、「朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)との交渉に人権を組み込むこと」を含む勧告を行った。
同報告官は今月1日に国連人権理事会に提出した北朝鮮の人権状況に関する報告書の中でこのように指摘していたが、今回の第46次定期理事会で改めてこうした内容を発表したかたちだ。
また、同時に「北朝鮮との経済・人道的協力に、人権に基づく枠組みを組み込むようにする」という内容や、「北朝鮮人権財団の設立を含めた、韓国国会で2016年に可決された北朝鮮人権法を実施する」といった内容の勧告を行った。
前者については、国連が2000年代以降取り入れている枠組みで、経済援助を行う際に、差別や排除といった既存の差別構造を是正する形でプロジェクトを立てることを求める内容だ。ただ、経済援助を行うのではなく、北朝鮮社会に存在する人権侵害と貧困の関連性を考えようというものだ。
後者については、文字通り「開店休業状態」となっている北朝鮮人権法の活性化を求めるものだ。16年9月に施行されたこの法では、南北人権対話の推進や北朝鮮人権状況を調査するための北朝鮮人権財団の設立・運営を定めているが、これらは未だスタートもしていない状態だ。
これらの指摘は、文在寅政権が南北関係の改善を優先するあまり、多くの北朝鮮住民が被害を被っている人権問題から目を背けているという内外の指摘を取り入れたものと見られる。
一方、同報告官は報告の中で、北朝鮮政府に対しても多くの勧告を行っている。
「国際的な人権基準に沿って、国内の人権侵害に対する説明責任メカニズムを確立すること」や、「OHCHR(国連人権高等弁務官室)、調査委員会、特別報告者が提起したものを含む人権侵害の存在を認め、人権監視員と国際人道組織に拘禁施設を含む国内へのアクセスを提供する」といった内容が含まれている。
また、日本との関係で懸案となっている拉致問題についても、「拉致を含む強制失踪の疑惑に対処し、犠牲者の家族に行方不明の親族の運命と居場所に関する正確な情報を提供すること」と勧告している。
その他にも、一年以上にわたって国境を封鎖するなど、新型コロナウイルス感染症の流行に対し北朝鮮政府が採り続けている強い措置を見直すことも求めた。
「COVID-19(新型コロナ)の蔓延を防ぐための措置が、経済的・社会的権利を含む人権の行使に与える影響を評価し、これらの権利を侵害する措置を見直すこと」、「医療専門家や人道的関係者の完全かつ自由なアクセスを許可し、情報へのアクセス制限を緩和し、最も脆弱なコミュニティへの支援を可能にするために、国連や人道的組織にタイムリーで関連性のあるデータを提供すること」といった指摘だ。いずれも防疫と権利の両立を求めるものだ。
国連人権理事会では2003年以降(当時は人権委員会)、18年連続で北朝鮮人権決議案を採択してきた。今年も23日に理事会の会期が終わるまでの間に、同用の決議案が採択されるものと予想されている。