
●19年7月が「底」
日韓関係がなぜ今のようになったのかは、様々な分析がある。
日韓の国力差が縮まるにつれ、追う韓国と追われる日本の力関係に変化が生まれるようになったとの見方もあれば、朝鮮半島の平和実現のために、今なお続く‘冷戦構造’を解体したい韓国と、現状維持を望む日本の外交路線が衝突を招いているとの視点もある。
そうした議論は他に譲るとして、韓国市民にとってやはり印象深いのは、2019年7月の日本政府による、半導体素材の輸出制限だ。
韓国では「輸出規制」という言葉で知られるこの措置は「日本と政治では揉めても経済は別」と安心していた韓国社会に大きなショックを与え、しかも韓国経済の一丁目一番地である半導体に関わるものであることから、愛国心を刺激した。
さらに19年8月に、文在寅大統領が「日本にはもう二度と負けない」と声明を出したことで、一気に反日感情が高まった。
韓国の世論調査会社『韓国リサーチ』の調査によると、2019年3月3週目に30ポイントを超えていた日本への好感度(100点満点。0は最も否定的で50が普通、100は最も肯定的)は、輸出制限後の同年7月4週目には18.1ポイントまで落ち込んだ。
だが最近の同様の調査は、この数値が回復していきていることを示している。
今年1月には25.0ポイント、そして最新の4月2日から5日まで行われた調査でも25.3ポイントとなり、安定を見せている。年代別に見ると、30代が22.4ポイントで最も低く、60代以上が27.9%で最も高かった。続いて18〜29歳が26.0ポイントで続いた。
こうした動きの背景には、日韓関係における「悪材料」が出尽くした点や、日本側から「強い言葉(いわゆる妄言)」が出てこない点などがあるものと見られる。
しかし13日に菅義偉首相が福島第一原発の処理水(韓国では処理済み汚染水と表現される)の海洋放出を決め、これに韓国政府は強く反発していることから、対日世論は今後また悪化する可能性もある。