[全訳] 第76回国連総会基調演説(2021年9月21日、文在寅大統領)
[全訳] 第76回国連総会基調演説(2021年9月21日、文在寅大統領)
  • The New Stance
  • 承認 2021.09.22 13:17
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韓国の文在寅大統領は21日(現地時間)、ニューヨークの国連本部で開催されている国連総会で基調演説を行った。事前に録画した動画での参加となった昨年とは異なり、今年は実際に参加しての演説となった。
21日(現地時間)、国連本部で演説する文在寅大統領。青瓦台提供。
21日(現地時間)、国連本部で演説する文在寅大統領。青瓦台提供。

●昨年に続き「終戦宣言」の実現訴え

文大統領は演説で、今日の国際社会が抱える課題として、新型コロナによる危機と気候危機への対応を挙げ、これらを克服する過程で国際社会が「地球共同体」に生まれ変わるという見解を明かした。

また、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)をめぐる朝鮮半島情勢に対しては昨年に引き続き「終戦宣言」の実現を訴えた。昨年とは異なり、南北米もしくは南北米中四者での「終戦宣言」という具体性を持たせたが、事前の根回しなどはなく宣言にとどまった。

一方で演説では、韓国政府が中進国として国際社会で果たす役割を「開発途上国と先進国の橋渡し」的なものと規定し、これを実現することで国際社会発展に貢献するというビジョンがより明確になった。

この内容は文在寅政権が一貫して主張し実践してきた、国際社会での韓国の役割の変化を整理するものでもあり、これまで挙げてきた外交上の成果を総決算するものと受け止められる。

以下は全訳文。青瓦台(大統領府)のテキストを参考に本紙が翻訳した。なお、今年は昨年とは異なり演説のタイトルは別途無かった。

※「終戦宣言」とは、朝鮮戦争(1950〜53)の終結を公にする宣言であり、休戦状態から平和体制に移行するための「平和協定」とは異なる。韓国政府はこれを朝鮮半島平和体制への移行に向けた第一歩と位置づけ、2018年から実現を模索している。終戦宣言の歴史と詳細に関しては以下の記事を参考されたい。

朝鮮戦争「終戦宣言」の年内実現なるか…カギはやはり文在寅
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180831-00095174/

●[全訳]第76回国連総会基調演説(文在寅、2021年9月21日)

アブドラ・シャヒド議長さま、アントニオ・グテーレス事務総長さまと各国代表の皆さん、

2年ぶりに国連総会の会議場に再び立ち、失われた日常の大切さを感じています。第76回国連総会議長に就任されたシャヒド議長のリーダーシップにより、世界的な危機克服のための国際社会の知恵と協力が集まることを期待します。

また、過去5年間、国連の発展と改革のために献身してきたグテーレス事務総長の再任を祝い敬意を表します。事務総長が力を入れてきた平和維持活動と気候変動への対応、持続可能な発展目標において、大きな進展をなし遂げることを願います。

今回の国連総会が新型コロナと気候危機からの回復と、持続可能な発展という希望のメッセージを世界の人々に与えることを願います。

議長、事務総長、各国代表の皆さん、

人間は共同体を築き生きる存在です。人類は共同体を通じ集団知性と相互扶助に支えられ、数多くの感染病に打ち勝ち共存してきました。新型コロナのパンデミックもやはり、人類愛と連帯意識で克服するでしょうし、国連がその中心に立つでしょう。

私たちは新型コロナへの対応のため、国境を越えてゲノム情報を共有し、緊密な協業によりワクチン開発に成功し、治療剤の開発においても早い進展を見せています。

新型コロナに勝つことは境界を崩すことです。私たちの暮らしと考えの領域が、村から国へ、国から地球全体へ広がりました。私はそれを「地球共同体時代」の誕生と見なします。「地球共同体時代」はお互いを受け入れ協力し合う時代です。共に知恵を出し合い、行動する時代なのです。

今までは経済発展に先んじた国、力で優位を持つ国が世界をリードしてきましたが、これからは全ての国が最善の目標と方法に歩調を合わせ、持続可能な発展を追求しなければなりません。

協力と行動を中心として、国連の役割はさらに大きくなるでしょう。国連の創立者たちは二度の世界大戦の惨禍を経験しながら、国際平和の秩序を模索してきました。

これからは国連は「地球共同体の時代」を迎え、新しい規範と目標を提示しなければならないでしょう。多者主義の秩序の中で互恵的に協力できるよう、国家間の信頼を構築する国連にならなければなりません。国際社会の意志と力量を結集し、行動に導く国連にならなければなりません。

国連が率いる「連帯と協力」の国際秩序に、韓国は積極的に参加します。

第2次世界大戦後、新生独立国だった韓国は国連と国際社会の支援のおかげで民主主義の発展と経済成長を同時に成し遂げることができました。これからは国際社会の責任ある一員として、国家間の共生と包容のために一層努力します。

先進国と開発途上国が共有できる協力と共生のビジョンを提示し、実践において先導的な役割を果たします。

「地球共同体」が解決すべき当面の課題は、新型コロナの危機から包容的な回復を成し遂げることです。低所得層や高齢層のような脆弱な階層の人々が、新型コロナの脅威に最もさらされています。

長いあいだ蓄積されてきた経済・社会的な問題も、新型コロナをきっかけに水面上に浮かび上がってきました。貧困と飢餓が深まり、所得・雇用・教育全般にわたって性別・階層別・国家別の格差が大きくなりました。

国連はすでに数年前から「2030持続可能な開発目標(SDGs)」を提示し、このような不均衡問題の解消を促してきました。国連のすべてのメンバーが今後、「2030持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、より真剣に努力しなければなりません。

韓国は、全ての人々、全ての国が新型コロナの脅威から脱することができるよう共に歩んでいきます。COVAXに2億ドルを供与するという約束を履行し、グローバルワクチン生産のハブの一軸を引き受け、新型コロナワクチンの公平で迅速な普及のために努力していきます。

「持続可能な開発目標」の達成にも取り組んでいきます。韓国は新型コロナ危機の克服と新しい飛躍のための「韓国版ニューディール」政策を推進しています。

特に、雇用セーフティネットと社会セーフティネットを拡充し、人への投資を拡大する「ヒューマンニューディール」により、人間中心の包容的な回復に努めています。 韓国版ニューディール政策の経験を、国際社会と共有していきます。

開発途上国が共に「持続可能な開発目標」に向かっていけるよう、新型コロナ以降需要が高まった、グリーン・デジタル・保健分野を中心に、ODAも拡大します。

「地球共同体」が解決すべきもう一つの緊急な課題は、気候危機への対応です。

地球は今、この瞬間にも予想より早く熱くなっています。国際社会がより緊密に力を合わせ、「炭素中立」に向かって進まなければなりません。

韓国は昨年「2050年までの炭素中立」を宣言し、「炭素中立基本法」を制定し、そのビジョンや履行体系を法律で定めました。来月には「2050炭素中立シナリオ」を確定し、11月のCOP26を機に「2030国家温室効果ガス削減目標」を上方修正して発表します。

石炭発電所を早期閉鎖し、新規の海外石炭発電に対する公的金融支援を中断し、新再生エネルギーの割合を増やすために努力しています。「炭素中立」は個別の国だけでなく、すべての国が協力してこそ達成できる目標です。

実践策もやはり持続可能でなければなりません。

韓国は「グリーンニューディール」を通じて、「炭素中立」を新産業の育成と雇用創出の機会にしています。

多くの韓国企業が自発的に「RE100キャンペーン(訳注:2050年までに使用する電力の100%を再生エネルギーにするというキャンペーン)」に参加し、水素をはじめとする新再生エネルギーへの投資を拡大し、ESG経営と「炭素中立」に拍車をかけています。政府は民間の技術開発と投資を強力に後押ししていていきます。

韓国は気候分野のODA拡大とともに、グリーンニューディールファンド信託基金を新設し、「グローバルグリーン成長研究所(GGGI)」を支援し、「炭素中立」のための技術と力を分かち合います。開発途上国が気候危機への対応能力を育てることができるよう支援します。

さらに、P4Gソウル首脳会議を開催し、国際社会の気候対応の意志を結集した経験をもとに、23年にCOP28を誘致します。パリ協定の忠実な履行のために、より積極的な役割を果たすことを願っています。

議長、事務総長、各国代表の皆さん、

「地球共同体」の最も切実な夢は、平和で安全な生活です。国連の発足は、国際関係のパラダイムを「競争と葛藤」から「共存と共生」へと転換させました。

国連は「力の均衡」によって保たれていた不完全な平和を。「協力」を通じた持続可能な平和に変え、人類すべての自由を増進するために努力してきました。

韓国は韓半島(朝鮮半島)から恒久的かつ完全な平和が定着するよう全力を尽くしていきます。

非核化と共同繁栄の韓半島を建設するために、韓国政府は「韓半島平和プロセス」を絶え間なく推進し、国際社会の支持の中で南北首脳会談による板門店宣言、9・19平壌共同宣言と南北軍事合意書、米朝首脳会談によるシンガポール宣言という歴史的な成果を実現することができました。

韓半島の平和の始まりは、常に対話と協力です。私は南北間、米朝間の対話の早期再開を促します。対話と協力が平和を生み出すということが、韓半島で証明されることを期待します。

私は二年前、この場で「戦争の不容認」と「相互安全保障」、「共同繁栄」を韓半島の問題を解決するための三つの原則として明らかにしました。昨年は、韓半島の「終戦宣言」を提案しました。

「終戦宣言」こそ、韓半島における「和解と協力」の新たな秩序を作る重要な出発点となるでしょう。

私は本日、韓半島の「終戦宣言」のために国際社会が力を合わせてくださることをもう一度促し、南北米三者または南北米中の四者が集まって、韓半島での戦争が終結したことを共に宣言することを提案いたします。

韓国戦争(朝鮮戦争)の当事国が集まって「終戦宣言」を成し遂げる時、非核化の不可逆的な進展と共に完全な平和が始まると信じています。

今年はちょうど、南北が国連に同時に加入してから30年になる意味のある年です。国連同時加入により、南北韓は体制と理念が異なる二つの国という点をお互いに認め合いました。しかし決して分断を永続させるためではありませんでした。互いを認め合い尊重し合う時、交流も和解も、統一へと進む道も始めることができるからです。

南北と周辺国が協力する時、韓半島の平和を確固として定着させ、東北アジア全体の繁栄に貢献することになるでしょう。それは後日、協力によって平和を成し遂げた「韓半島モデル」と呼ばれるようになるでしょう。

北韓(朝鮮民主主義人民共和国)もやはり、「地球共同体の時代」に合った変化を準備しなければなりません。

国際社会が韓国とともに北韓に絶えず協力の手を差し伸べることを期待します。

すでに高齢の離散家族の念願を慮り、南北離散家族の再会が一日も早く進められなければなりません。「東北アジア防疫・保健協力体」のような地域プラットフォームで南北が協力する時、感染症と自然災害により効果的に対応することができるはずです。

韓半島の運命共同体として、また「地球共同体」の一員として、南と北が共に力を合わせていくことを願っています。

私は「共生と協力の韓半島」のために残る任期の間、最後まで最善を尽くします。

最近のアフガニスタンの状況は、平和と人権のための国連の役割がいかに重要かを証明しています。

来たる12月、「国連平和維持長官会議」を韓国で主催します。国連平和維持活動がより安全かつ効果的に行われるよう、国際社会が緊密に協力するきっかけにします。

国連の紛争予防活動と平和構築活動に対する韓国の貢献も拡大していきます。

韓国は2024〜2025年に安保理非常任理事国に入り、持続可能な平和と未来世代の繁栄のために積極的な役割を果たしていきます。各国の協調と支持を期待します。

議長、事務総長、各国代表の皆さん、

人類は数多くの逆境の中でも未来に対する希望を失ってきませんでした。互いを信じて協力し、その希望を現実に変えてきました。新型コロナという危機の中でも、私たちは再び希望を育んでいます。より良い回復のために力を合わせています。

人類が一丸となって今日を忘れないならば、私たちはきっと、より良い明日を作ることができるはずです。「地球共同体」の時代を切り開く人類の新しい旅路に、連帯と協力をもって国連が率先してくれることを願っております。

ありがとうございます。